聖杯戦争が終結してからしばらく経ち、俺たちは新しい学年へと進級した。

聖杯戦争が残した傷跡は多かった、学校、教会、中でも酷かったのが柳洞寺の裏庭だった

セイバーの聖剣により裏にあった池が蒸発し、そこだけ隕石が落ちたようになっていたらしい

まあ、それも言峰の代わりに派遣された新しい神父によって修復され、

慎二の結界によって被害を受けた学生も完治し、表向きは何事もなかったようになった。

けれど、ギルがメッシュに不完全な聖杯にされた慎二は入院を余儀なくされた。

ランサーに突かれた右腕は二度と治せないらしいが、命に別状はなく、入院生活を送っている。

桜は慎二の怪我を不審思っていたが慎二の看病で何とか聞かれずにはすんだ。

セイバーは遠坂のサーヴァントとして現界し、遠坂は卒業したらロンドンへ行くらしい

遠坂は俺を助手としてロンドンへ連れて行くらしく、聖杯戦争中からの魔術講座は継続されている。

藤ねぇは変わらず俺の担任で、朝夕と食事を目当てにやってくる。

まあ、なんだこんだで衛宮士郎は正義の味方を目指している。

それが、アイツを…もう一人の自分自身を否定した俺がするべきことだと思うから――――。

 

 

 

日常

 

 

 

 

 

「ん… 朝か…」

隙間から入ってくる朝日が眩しくて目を覚ます

変だな…?

俺の部屋なら障子もあるからこんなに光が差すはずないんだが…

「ああ、そうか… 昨日は鍛錬してそのまま寝ちゃったのか」

自分の格好を見てみる、それは昨日の鍛錬したままの作業服だった

「えっと時間は…」

周りを見回してみる、数日前に修理したばかりの置時計があった。

時計の指している時間は5時。

今から朝食を準備しても余裕な時間だった。

「さて、藤ねぇが来る前にちゃちゃっと作っとくか」

桜が慎二の看病で来なくなったので桜の手は借りられないし、

何より未だに藤ねぇが朝夕と強襲してくるので朝は手を抜けない。

ひとまず土蔵の目に見える部分を片付けて台所に行くか。

 

 

「おっと、鮭と納豆があるな」

冷蔵庫を開けて中身を確認する

「味噌汁は昆布だしでいいか、あっこの鶏肉賞味期限今日までじゃないか!」

冷蔵庫を漁ると色々な食材が出てきた

けど、おかしい… こんなに買い込んだつもりはないんだが…

冷蔵庫の賞味期限切れ寸前の食材を出し終えると一枚のメモがあった。

『昨日大安売りしてたから買っておいたよ。 明日のお弁当にするべし!』

一枚のメモ右下に虎のスタンプが押してある時点で犯人は誰か明白だろう…

「しかし、すごいな。この量…」

ざっと見ても8〜9人前はある、調理したらもっとだろう。

「えっと、まずメンバーを確認してみよう」

俺、藤ねぇ、遠坂、セイバー、桜の弁当を作ってセイバーと藤ねぇが二人前食べても余るぞ…

他に弁当食べてくれそうな人といえば…

後藤…間違ってもありえん…

一成…アイツで一人目…

慎二…いや、病人にはまずいだろう…

美綴…アイツで二人目…

よく考えたら、俺って友だち少なくないか…?

一瞬頭をよぎった考えを頭を振って忘れる。

俺、遠坂、桜、一成、美綴で各一人前… セイバー、藤ねぇで各二人前。

合計9人前か… それなら何とかなるな

よし、そうと決まったらさっさと作ってしまうか!

 

 

 

一時間後…

「できた〜」

別に食べる藤ねぇとセイバーには特製の弁当箱に二人前を詰めた。

俺たちの食べるやつはお花見に持ってくような重箱に入れた。

その完成品を見てある事に気付いた。

「どうやって持っていくべきか…」

十人前近くなるとその重さは半端じゃない。

歩いて持っていくとなるととんでもない重労働になってしまう。

「仕方ない… あれで行くか」

ガラガラ

玄関の戸の開く音がする

この時間に来る人といったら決まっている。

「むむむ。 なにやら美味しそうなにほい…」

制作時間1時間の弁当に飛びつこうとする飢えた獣。

「待て、藤ねぇ。 そっちは昼飯だ」

ピタッと止まる獣もとい藤ねぇ。

「あれ、士郎今日は遅いの?それにお弁当?」

「そうだ。 勝手に食料を冷蔵庫に入れてくのはいいけどちゃんと言っとけよ。賞味期限切れ寸前の食材が十人前出てくるのはあまり気持ちのいいものじゃない」

「はいはい〜。 これが私の?」

そう言って五人前の入ったお重を持っていこうとする

「違う。 藤ねぇのはこっち」

頭を抱えて藤ねぇ専用の虎印の弁当箱を渡す。

「じゃあ、ちょっと寄らなきゃいけないとこあるから先出るぞ。 戸締りよろしくな」

藤ねぇにテーブルの上の朝食を食べるように言って出る

廊下で今からもしゃもしゃと「士郎〜 このお弁当美味しいよ〜」と聞こえたが無視することにした。

 

 

家を出て、門ではなく土蔵に行く

えっと鍵、鍵と…

ポケットに入っている鍵の存在を確かめて土蔵の隣に作ったガレージを空ける。

そこには聖杯戦争が終わってから乗るようになったバイクが一台止めてあった。

聖杯戦争中にバイトをしていなかったせいで終わってからは頻繁に新都の方にバイトに行くようになったのだが、

新都まで歩いていくには遠いしバス代もバカにならないので新都までの足が必要になった。

そんな時商店街の知り合いが壊れたバイクを格安で売ってくれた。

なんと3万円で! しかし、壊れていたので走ることできない…

それを修理して走れるようにした。 色は遠坂によって決められ、

廃車寸前のバイクはワインレッドのアメリカンバイクと化した。

バイクにキーを挿してエンジンをかける。

ヘルメットをかぶって後ろの荷台に弁当をくくりつけて遠坂の家へと向かった。

 

 

 

ピンポーン

静寂の洋館に似つかない音がなる。

「士郎? 入ってきていいわよー」

遠坂の返事が聞こえたので合鍵で開けて入る

「おはようございます。シロウ、こんな朝早くにどうしたのですか?」

金色の髪に翡翠色の目をした少女が出迎えてくれる。

「ああ、おはようセイバー。 藤ねぇが大量に賞味期限切れ寸前の材料を持ってきたんでみんなのぶんの弁当作ったんだ」

これはセイバーの分な、とセイバー用の弁当を手渡す。

「シロウの弁当ですか!?」

セイバーは俺の手から弁当を受け取ると胸に抱く。

「ああ、今日はいい日です。 ありがとうシロウ」

「どういたしまして。そう言ってくれると作った甲斐があるよ」

セイバーみたいに喜んでくれると気持ちがいい。

「それに遠坂はどうしたんだ?」

「それが… 昨日魔道書の解読をしていたせいで寝坊してしまったようなんです」

「寝坊って… まだ余裕が…」

遠坂の家の玄関にあるアンティークな時計を見る

高そうだな……じゃなくてっ!

「な、なんで8時!!」

で、でも土蔵の時計だったらまだ7時くらいのはずじゃないのか!?

あれ…朝、藤ねぇが朝なんか言っていたような…

チクチク ポーン!

『あれ? 士郎今日朝遅いんだ? ………』

あっ、あ―――――――――!!

も、もしかして土蔵の時計壊れてた!?

「士郎! 急ぐわよ!」

制服を急いで着たのかいつもより少し乱れた遠坂が俺の横を通り抜けていく。

「と、遠坂!? じゃ、じゃあセイバーまたな!」

「いってらっしゃい。 シロウ」

セイバーに見送られバイクで急いで遠坂を追う。

っていうかアイツはやっ!

待っているということもせず、遠坂はすでに坂の下で豆粒となっていた…

 

 

坂の下にいる遠坂に追いつき、遠坂を後ろに乗せて学校に着いた。

「なんとか間に合ったな」

校舎に付いている時計は8時25分を指していた

「この時間なら大丈夫そうね」

ヘルメットをはずしてバイクから降りる

もちろん朝作った弁当も忘れずにだ。

「さっきから積んであるそれ何?」

「ああ、藤ねぇが賞味期限切れ寸前の材料を大量に買い込んでてさ。それを今日の弁当に使ったんだ」

「どっからみても5〜6人前はあるけど?」

「ああ、それなら大丈夫だ。 一成に美綴、それに桜を誘えば処理できない量じゃないだろ」

「まあ、そうね。 じゃあ私は桜と綾子に言っておくから一成の方は任せたわよ」

「わかった。 じゃあ行こうか。 このまま話してたら遅刻しかねない」

「そうね。 じゃあ行きましょうか」

 

 

 

午前中の授業が終わって昼休みになった

遠坂と美綴がいなくなっているから一緒に桜を呼びにでも言ったんだろう

俺も一成に声をかけるか。

辺りを見回すと教室を出て行こうとする一成がいた

「一成待て、今日の昼飯持ってきたか?」

「いや、今日は親父殿が材料を買い忘れていてな。 学食にするつもりだが?」

「それなら丁度いい。 今日弁当を作ってきたからみんなで食べよう」

「衛宮が俺に弁当を?」

「ああ、なんかみんなに同じ説明してるな 俺…」

「どうしたんだ?」

「いや、実は朝かくかくしかじかでな」

「それは、それは。 藤村先生に感謝しなくてはいけんな」

かんらかんらと笑う生徒会長。

「みんなはもう屋上に行ってると思うからさっさと行こう」

「うむ。 了解した」

 

 

 

「……美味い」

「先輩、おいしいです」

「うむ、濃すぎず薄すぎず絶妙な味付けだ…」

「悔しいけど、腕を上げたわね…」

三者三様の感想をくれる。

こらこら遠坂、睨むな。

「けど、本当にどうしたの? これなんてもうプロ級じゃない?」

「それだけじゃありませんよ。 和食はもちろんですけど洋食や中華もすごく美味しいです…」

「この唐揚げも上品なんだけどなんだか素朴な味だ」

「うむ、色々な料亭やレストランでバイトした甲斐があったらしいな」

「「「料亭やレストラン!!」」」

三人同時に叫ぶ。

叫ぶのはいいが、回りからすごく注目されている…

「ちょっと士郎! 料亭とかレストランでバイトってどういうこと!?」

「バイト先で紹介されたとこに行ったら色々な所を紹介されてさ 2ヶ月間やってたんだ」

「け、けど、洋食に和食、中華にこれなんてエスニック料理じゃないですか!?」

「あ、ああ。 えっとフランスにイタリア、インドに……etcのレストランで習ったのかな?」

「あんた… いつそんなことやってたのよ…」

「春休みだったからな。 時間、余ってたし」

「そういう問題じゃないでしょ! どこをどうやったら23カ国の料理が出来るようになるってのよ!!」

遠坂に襟をつかまれてがくがく揺さぶられる。

「それくらいにしときなよ、遠坂。 衛宮の料理が美味くなる事はいい事じゃないか」

「そ、それはそうだけど…」

遠坂の揺さぶりが弱くなる

「うむ、しかし手を離してやらんと拙い事になるのではないか?」

「「え?」」

「そのままでは衛宮が死んでしまうのではないのか?」

南無と拝む我が親友…

「って士郎!! なにあんた死にそうになってるのよ!」

お前がやったんだろお前が……

 

 

 

 

「ご馳走様―」

「お粗末様」

空になった弁当箱を片付ける

作るのは苦労したが、ここまでキレイに空になると清清しい

「先輩、今日の放課後お時間ありますか?」

桜は食後のお茶を入れてくれる

「放課後? 別に何もないけど、どうしたんだ?」

「実は兄さんがお話があるそうなんです。 主将も一緒に頼むって言ってました」

「私も? いったいなんだい?慎二が私に用って」

「いえ、それは分からないんですけど…」

「分かった。 今日の放課後だな?」

「はい、よろしくお願いします」

「じゃあ、直接行ってかまわないか?」

「いいんじゃないか? けど新都までバスかなんかで?」

「それなら大丈夫だ。 今日はバイクだ」

「そうか? でもなぁ」

美綴が意味ありげに俺と遠坂を見比べる

「どうしたのかしら? 美綴さん」

「いや、遠坂の指定席をとったらまずいかなぁってさ〜」

「あら? 面白い冗談ですね」

ぶるっ

何かが背筋をかける悪寒がした

この、扉を開けたネズミの目の前に蛇がいたような

「冗談だよ。そこまで命知らずな私じゃない。 じゃあ、衛宮今日の放課後正門でいいか?」

「あ、ああ。 じゃあ放課後、正門でな」

「じゃあ、先輩お願いしますね」

キーんコーンカーンコーン

「おっとチャイムだ、すぐに行かねば次の授業に遅刻してしまう」

「ああ、先に行っててくれ。片付けてすぐ行く」

「それくらいなら私がやるよ」

ただ飯食らいってのもなんだかな、と弁当箱をささっと片付けてくれる。

「ありがとな。 これなら次の授業に遅れないですみそうだ」

「まあ、美味い昼飯食わせてもらったからね。 これでおあいこさ」

「士郎。 早く行かないと遅刻するわよ!」

「あ、ああ! すぐ行く!」

屋上の扉の前で遠坂が叫んでる。

時間を見ると授業開始3分前。

これだと小走りで間に合うかな?

 

 

 

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